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民   法  ( 配偶者居住権、遺留分、特別寄与)

関連過去問 11-32-オ17-29-217-29-317-29-417-29-5令3-35-イ令3-35-ウ令3-35-エ令3-35-オ
関連条文 配偶者居住権(1.028条)、審判による配偶者居住権の取得(1.029条)、配偶者居住権の存続期間(1,030条)、配偶者居住権の登記等(1.031条)、配偶者による使用及び収益(1.032条)、居住建物の修繕等(1,033条)、居住建物の費用の負担(1,034条)、居住建物の返還等(1.035条)、使用貸借及び賃貸借の規定の準用(1,036条
 配偶者短期居住権(1,037条)、配偶者による使用(1,038条)、配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅(1,039条)、居住建物の返還等(1040条)

























1.配偶者の居住の権利
1.1 配偶者居住権(1.028条法改正(H01.0701新規)
 「被相続人の配偶者(単に「配偶者」という)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(「居住建物」という)の全部について無償で使用及び収益をする権利(「配偶者居住権」という)を取得する。
 ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
@遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
A配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
 「2項 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない」

(1)成立要件
@相続開始の時、被相続人所有の建物に居住していた配偶者であること
・配偶者は事実婚ではだめ
・相続開始の時、建物に、(配偶者は除き)共有者がいないこと
A配偶者居住権を取得させる旨の遺産分割協議、遺贈があること。
(2)特徴等
@一身専属権であり、譲渡はできない(1,032条2項)、相続の対象でもない。
A「配偶者居住権」そのものは無償ではなく、「その財産的価値に相当する金額を相続したものとして扱われる。それ以外の遺産を相続する場合に、この価値分だけ控除となる)
 ただし、
・分割協議等により、所有権を取得する場合に比べて。低コストである。
・使用・収益については無償となる。(配偶者短期居住権では使用のみ無償)
・この点、「家賃なしの賃借権」と似たような性質がある。(1,036条参照)
 審判による配偶者居住権の取得(1.029条法改正(H01.0701新規)
 「遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所は、次に掲げる場合に限り、配偶者が配偶者居住権を取得する旨を定めることができる」
@共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているとき。
A配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるとき(前号に掲げる場合を除く)

・遺産分割がまとまれば、「配偶者居住権」を取得させることができる。
・遺産分割協議がまとまらない場合でも、以下の場合に限り、家庭裁判所が審判により、「配偶者居住権」を取得させることができるようにした。
@共同相続人の間では配偶者居住権を取得することについて合意が成立しているものの、その他の財産についての協議がまとまっていないので、遺産分割について家庭裁判所に請求がなされた場合。
A共同相続人の中に反対の者がいるなどで合意が成立していないので、家庭裁判所に遺産分割の請求をし、配偶者が配偶者居住権取得の希望を申立てた場合であって、家庭裁判所が「居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために特に必要がある」と認めた場合。
 配偶者居住権の存続期間(1,030条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる」
 配偶者居住権の登記等(1.031条法改正(H01.0701新規)
 「居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。以下この節において同じ)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う」
  「2項 第605条(不動産賃貸借の対抗要件)の規定は配偶者居住権について、第605条の4(不動産の賃借人による妨害の停止の請求)の規定は配偶者居住権の設定の登記を備えた場合について準用する」

@2項:配偶者居住権を登記すれば、不動産賃借権に準じて、
・居住建物について物権を取得した者、その他の第三者に対抗することができる。
・居住建物の占有を妨害する者に対する妨害の停止、不法占有者に対する明け渡しを請求できる。
A1項:上記2項の効果を念頭において、
・配偶者居住権の対象となる居住建物の所有者に、配偶者が配偶者居住権を登記できるようにしなければならないという義務を負わせた。(配偶者は、配偶者居住権の設定登記を所有者に対して請求できる権利を有する)
・配偶者居住権の設定登記は、原則として、不動産登記法の定めにより、登記権利者(配偶者)と登記義務者(所有権者)と)の共同申請で行うべきものである。
 不動産登記法60条「権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない」
 ここで、登記権利者とは、権利に関する登記をすることにより、登記上直接に利益を受ける者、登記義務者とは、権利に関する登記をすることにより、登記上直接に不利益を受ける登記名義人をいう。
 権利登記(不動産に関する権利の状況・権利の変動を表示した登記)の申請は、一定の例外(相続による登記。審判による登記など)を除いて、共同申請が原則である。(不利益を被る者も参加させることにより、登記の信頼性を維持するためでもある)
 配偶者による使用及び収益(1.032条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。ただし、従前居住の用に供していなかった部について、これを居住の用に供することを妨げない」
 「2項 配偶者居住権は、譲渡することができない
 「3項 配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない」
 「4項 配偶者が1項又は前項の規定に違反した場合において、居住建物の所有者が相当の期間を定めてその是正の催告をし、その期間内に是正がされないときは、居住建物の所有者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者居住権を消滅させることができる」
 居住建物の修繕等(1,033条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者は、居住建物の使用及び収益に必要な修繕をすることができる」
 「2項 居住建物の修繕が必要である場合において、配偶者が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、居住建物の所有者は、その修繕をすることができる」
 「3項 居住建物が修繕を要するとき(1項の規定により配偶者が自らその修繕をするときを除く)、又は居住建物について権利を主張する者があるときは、配偶者は、居住建物の所有者に対し、遅滞なくその旨を通知しなければならない。ただし、居住建物の所有者が既にこれを知っているときは、この限りでない」
 居住建物の費用の負担(1,034条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者は、居住建物の通常の必要費を負担する」
 「2項 583条2項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する」
 居住建物の返還等(1.035条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者は、配偶者居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物の所有者は、配偶者居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない」
 使用貸借及び賃貸借の規定の準用(1,036条法改正(H01.0701新規)
 「597条1項及び3項(期間満了・借主の死亡による使用貸借の終了)、600条(損害賠償及び費用償還請求期間の制限)、613条(転貸の効果)並びに616条の2(賃貸物の全部滅失等による賃貸者の終了)の規定は、配偶者居住権について準用する」
  1.2 配偶者短期居住権(1,037条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(居住建物)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(居住建物取得者)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。「配偶者短期居住権」という)を有する。
 ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は891条(欠格事由)の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない」
@居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合:遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日
A前号に掲げる場合以外の場合:3項の申入れの日から6か月を経過する日
 「2項 前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない」
 「3項 居住建物取得者は、1項1号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる」

(1)成立要件
(@相続開始の時、被相続人所有の建物に、無償で居住していた配偶者であること
・配偶者は事実婚ではだめ
・相続開始の時、建物に、配偶者以外の共有者がいる場合であっても、無償で居住している部分については 排除されない。
A共同相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合であっても、一定の期間、認められる。
(2)特徴等
@一身専属権であり、譲渡はできない(1,032条2項)、相続の対象でもない。
A「配偶者短期居住権」そのものも無償であり、「それ以外の遺産を相続する場合でも、この価値分だけ控除されることはない)
・使用については無償であるが、収益は認められない。。
 配偶者による使用(1,038条)法改正(H01.0701新規)
 「配偶者(配偶者短期居住権を有する配偶者に限る)は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用をしなければならない」
 「2項 配偶者は、居住建物取得者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用をさせることができない」
 「3項 配偶者が前2項の規定に違反したときは、居住建物取得者は、当該配偶者に対する意思表示によって配偶者短期居住権を消滅させることができる」
 配偶者居住権の取得による配偶者短期居住権の消滅(1,039条法改正(H01.0701新規)
 「配偶者が居住建物に係る配偶者居住権を取得したときは、配偶者短期居住権は、消滅する」
 居住建物の返還等(1040条)法改正(H01.0701新規)
 「配偶者は、前条に規定する場合を除き、配偶者短期居住権が消滅したときは、居住建物の返還をしなければならない。
 ただし、配偶者が居住建物について共有持分を有する場合は、居住建物取得者は、配偶者短期居住権が消滅したことを理由としては、居住建物の返還を求めることができない」
 「2項 599条1項及び2項並びに621条の規定は、前項本文の規定により配偶者が相続の開始後に附属させた物がある居住建物又は相続の開始後に生じた損傷がある居住建物の返還をする場合について準用する」
 
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 Aが死亡し、Aの妻B、A・B間の子CおよびDを共同相続人として相続が開始した。相続財産にはAが亡くなるまでAとBが居住していた甲建物がある。この場合において、Aが遺言において、遺産分割協議の結果にかかわらずBには甲建物を無償で使用および収益させることを認めるとしていた場合、Bは、原則として終身にわたり甲建物に無償で居住させることができるが、甲建物が相続開始時にAとAの兄Fとの共有であった場合には、Bは配偶者居住権を取得しない。

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正しい 誤り

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 Aが死亡し、Aの妻B、A・B間の子CおよびDを共同相続人として相続が開始した。相続財産にはAが亡くなるまでAとBが居住していた甲建物がある。この場合において、Aの死後、遺産分割協議が調わない間に、Bが無償で甲建物の単独での居住を継続している場合、CおよびDは自己の持分権に基づき、Bに対して甲建物を明け渡すよう請求することができるとともに、Bの居住による使用利益等について、不当利得返還請求権を有する。

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正しい 誤り

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 Aが死亡し、Aの妻B、A・B間の子CおよびDを共同相続人として相続が開始した。相続財産にはAが亡くなるまでAとBが居住していた甲建物がある。この場合において、家庭裁判所に遺産分割の請求がなされた場合において、Bが甲建物に従前通り無償で居住し続けることを望むときには、Bは、家庭裁判所に対し配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出ることができ、裁判所は甲建物の所有者となる者の不利益を考慮してもなおBの生活を維持するために特に必要があると認めるときには、審判によってBに配偶者居住権を与えることができる。

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正しい 誤り

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 Aが死亡し、Aの妻B、A・B間の子CおよびDを共同相続人として相続が開始した。相続財産にはAが亡くなるまでAとBが居住していた甲建物がある。この場合において、遺産分割の結果、Dが甲建物の所有者と定まった場合において、Bが配偶者居住権を取得したときには、Bは、単独で同権利を登記することができる。

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正しい 誤り


















 遺留分
 遺留分の帰属及びその割合(1042条法改正(H01.0701:1項文言の改正、2項新規)
 「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける」
@ 直系尊属のみが相続人である場合:3分の1
A 前号に掲げる場合以外の場合:2分の1

 「同2項 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに900条及び901条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする」
 遺留分を算定するための財産の価額(1043条法改正(H01.0701)
 「遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする」
 同2項 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める」
 改正点とポイント
@改正は1項のみ(旧1029条(遺留分の算定)を改正して1043条に)
・「遺留分は」から「遺留分を算定するための財産の価額は」に。「控除してこれを算定する」から「控除した額とする」に
・これは、1046条1項から、「遺留分は金銭債権のみとする。物権に関するものも金銭債権として評価する」ことになったためである。
A贈与した財産の額は、
・金銭の場合は、 相続開始の時の貨幣価値に換算した価額とする。(最高裁判例[遺留分減殺請求事件}(S51.03.18
・動産、不動産についても、相続開始時の評価額に換算した価額とする。
 「1044条 法改正(H01.07.01) 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする」
 「同2項 904条(特別受益者の相続分)の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する」
 「同3項 相続人に対する贈与についての1項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る)」とする」
  改正点とポイント
@1項(旧1030条と同じ):相続人以外の者に対する贈与も、原則として相続開始前1年間になされたものであれば、遺留分計算の対象となる財産。
A2項(旧1044条と同じ):贈与の価額は、受贈者の行為によって滅失、価格の増減があったときでも、原状のままであるものとみなして定める。
B3項(新規):相続人に対する贈与は「相続開始前1年間ではなく、10年間になされたもの(遺留分権利者に損害を加えることを知って行った場合は、10年より前のものも含む)であって、かつ特別受益に該当する贈与に限られる。
 「1045条 法改正(H01.07.01) 負担付贈与がされた場合における1043条1項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする」
 「同2項 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす」
  改正点とポイント
@1項(旧1038条の改正)
・負担付贈与とは、贈与契約の一部として、受贈者に一定の給付義務を負担させる契約のこと。
⇒これをあげるから、あれをやってくれ。
・負担付贈与を、遺留分を算定するための財産の価額に含めるときは、贈与の価額から負担の価額を引いた額とする。
 改正前1038条では、「負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求できる」とあり、遺留分を算定するための財産の額についても、負担の価額を引いてよいのかどうかがはっきりしなかった。
A2項(旧1039条の改正)
・被相続人が不相当な対価(安すぎるあるいは高すぎる価格)で売買などの有償行為を行った場合、双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って行った場合に限り、その不相当な対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。(たとえば、300万円の価値のある土地を、遺留分権利者に損害を与えると知っていながら、100万円で売却した場合は、200万円の贈与があったとして、遺留分を算定するための財産の額に加える。改正前であれば、遺留分権利者は、その土地を取り戻した上で、100万円を返すことになっていた)

 遺留分侵害額の請求(1046条)法改正(H01.07.01)
 「遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる」
 「同2項 遺留分侵害額は、1042条の規定による遺留分から1号及び2号に掲げる額を控除し、これに第三号に掲げる額を加算して算定する」
@遺留分権利者が受けた遺贈又は903条1項に規定する贈与の価額
A900条から902条まで、903条及び904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
B被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条3項において「遺留分権利者承継債務」という)の額
  改正点
@改正前の遺贈又は贈与の減殺請求(旧1031条)では
 「遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる」とあり、例えば土地などの遺贈・贈与が遺留分を侵害する場合は、遺贈・贈与を受けた者が取得した部分は侵害の程度に応じて、遺留分権利者の物になるという物権的効果が発生するとされていた。(結果として、共有となるため、新たな火種が生じることが多かった)
A改正後においては、例えば土地などの遺贈・贈与が遺留分を侵害する場合であっても、侵害する程度に応じた金額の支払いで解決できるようにした。(物権的効力を否定し、これを金銭債権に転換した)
 受遺者又は受贈者の負担額(1047条法改正(H01.07.01)
 「受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する」
@受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
A受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
B受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く)、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
 「同2項 904条、1043条2項及び1045条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する」
  「同3項 前条1項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって1項の規定により負担する債務を消滅させることができる。
 この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する」
 「同4項 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する」
 「同5項 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、1項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる」
 遺留分侵害額請求権の期間の制限(1,048条法改正(H01.07.01)
 「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。
 相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする」
  改正点とポイント
@旧1042条を以下の点で改正
・「減殺の請求権」から「遺留分侵害額の請求権」に
・「減殺すべき贈与又は遺贈」から「遺留分を侵害する贈与又は遺贈」に。
A上記は、改正前にあった「贈与又は遺贈そのものの一部分を減らす、取り戻す(現物返還)という物権的効力」を改正後は否定し、すべてを金銭債権で解決することになったからである。
B遺留分侵害額請求権の消滅時効は、知った時から1年と短期であるが、遺留分侵害額請求権により取得した金銭債権の消滅時効は、166条により、知った時から5年である。(10年は同じ)
 放棄(1049条)(旧1043条)
 「相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる」
 「2項 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない」
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4
  相続人が被相続人から贈与された金銭をいわゆる特別受益として遺留分を算定するための財産の価額に加える場合には、贈与の時の金額を相続開始のときの貨幣価値に換算した価額をもって評価するべきである。(R02改)@

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正しい 誤り
17
29
2
 遺留分侵害額請求権の行使は、受遺者または受贈者に対する意思表示によってすれば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はなく、いったんその意思表示がなされた以上、法律上当然に遺留分侵害額の請求効果が生じる。(R02改)@
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正しい 誤り
17
29
3
 被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分侵害額請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分侵害額請求権の意思表示が含まれる。(R02改)@
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正しい 誤り
17
29
5
 遺言者の財産全部についての包括遺贈に対して遺留分権利者が遺留分侵害額請求権を行使した場合には、遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有すると解される。(R02改)@
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正しい 誤り
11
32オ
 共同相続人の一人が遺留分を放棄した場合には、他の共同相続人の遺留分は、増加する。@
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正しい 誤り
   特別の寄与(1050条)法改正(H01.07.01新規)
 「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び891条(相続人の欠格事由)の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く、「特別寄与者」という)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払を請求することができる」
 「2項 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない」
 「3項 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める」
 「4項 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない」
 「5項 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に900条(法定相続分)から902条(遺言による相続分の指定)までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する」