行政書士講座(民法)

民法過去問 民法条文 民法判例 ホーム
5B

民   法 (贈 与、売 買、買 戻 し)

関連過去問 6-30-16-30-26-30-36-30-46-30-59-30-1、9-30-29-30-39-30-49-30-512-27-115-28-315-29-ウ15-29-オ17-28-117-28-217-28-317-28-417-28-518-32-ウ19-27-121-32-イ23-32-123-32-224-31-124-31-224-31-324-31-424-31-524-32-124-32-225-29-329-5-327-33-127-33-227-33-327-33-427-33-5令元ー32-オ令3-33-イ令3-33-ウ令3-33-エ令3-33-オ
関連規定 贈与(549条)、書面によらない贈与の解除(550条)、贈与者の引渡し義務等(551条)
 定期贈与(552条)、負担付贈与(553条)、死因贈与(554条)、
 売買(555条)、手付(557条)、売買契約に関する費用(558条)、有償契約への準用(559条)、
 権利移転の対抗要件に係る売主の義務(560条)、他人の権利の売買における売主の義務(561条)、
 買主の追完請求権(562条)、買主の代金減額請求権(563条)、買主の損害賠償請求及び解除権の行使(564条)
 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任(565条)、 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(566条)、目的物の滅失等についての危険の移転((567条)、競売における担保責任等(568条)、
 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求(570条)、代金の支払期限(573条)、代金の支払場所(574条)、果実の帰属及び代金の利息の支払(575条)、権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶(576条)  抵当権等の登記がある場合の買主による代金支払の拒絶(577条)、売主による代金の供託の請求(578条)
 買戻しの特約(579条)、買戻しの期間(580条)、買戻しの特約の対抗力(581条)、買戻しの実行(583条)


















1.贈与契約 
 贈与(549条)法改正(R02.04.01)
 「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」
 改正点とポイント
@改正点は「自己の財産」から「ある財産」に。
A他人の財産を目的とする贈与も有効であることが、明確にされた。 
 書面によらない贈与の解除(550条) 法改正(R02.04.01)
 「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。 ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」
 改正点とポイント
@改正点は「撤回する」から「解除をする」
A「解除」は、意思表示に瑕疵があることを理由としないで契約の効力を消滅させる行為を意味することとなった。
 一方、「撤回」は意思表示の効力を消滅させる行為を意味するものであって、契約の効力を消滅させる意味では使用しないことに。
B「書面によらない贈与は解除をすることができる」ということは、「書面による贈与は、原則として、解除できない」ということ。
C「履行の終わった部分」とは、
・不動産の場合は、引渡しがあれば移転登記が済んでいなくても。また、移転登記があれば引渡しが済んでいなくても、履行は終わったとされる。
・動産の場合は、引渡しの有無により判断される。
1.2 贈与者の引渡し義務等(551条) 法改正(R02.04.01)
 「贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引渡し、又は移転することを約したものと推定する」
 「同2項 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う」
 改正点とポイント
・タイトルを、「贈与者の担保責任」から、「贈与者の引渡し義務等」へ。
@1項:
旧条文は、「贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。 ただし・・・」とあって、
 一般には瑕疵担保を法定責任としてとらえるが、贈与者の場合は瑕疵担保責任を原則として負わないとしていた。
・改正後は、契約責任説の立場にたつとしても、贈与が無償であることから、売主の責任は、売買契約にくらべて軽減されたものとし
・「契約を締結したときの状態で引き渡せば、その内容が不適合であったとしても、当事者間での別段の合意がある場合をのぞき、原則として担保責任は問われない」とした、
A2項:
 ただし、負担付贈与(受け手に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与)の場合に限り、その負担の限度において、担保責任を負うことに。
⇒このマンションあげるから、年とったら介護を頼むといった場合、それ相応の使用できる物件でないと、贈与者に担保責任が発生する。
 定期贈与(552条)
 「定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う
 負担付贈与(553条)
 「負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する」
 死因贈与(554条)
 「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」
















17
28
1
 未登記の建物を書面によらず贈与した場合において、贈与者Aが受贈者Bにその建物を引き渡したときは、Aはその贈与契約を取り消すことができない。(応用)@

解説を見る

正しい 誤り
17
28
2
 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、贈与者Aが受贈者Bにその建物を引き渡したときは、所有権移転登記が未了であっても、Aはその贈与契約を取り消すことができない。(17-28-1の類型)@

解説を見る

正しい 誤り
17
28
3
 既登記の建物を書面によらずに贈与した場合において、贈与者Aから受贈者Bにその建物の引渡しが行われていないときであっても、所有権移転登記がなされていれば、Aはその贈与契約を取り消すことができない。(17-28-1の応用)@

解説を見る

正しい 誤り
27
33
1
 Aは自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した。
 本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも解除することができるため、甲がBに引き渡されて所有解除するこ権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を解除することができる。(R02改) '(17-28-3の類型)@

解説を見る

正しい 誤り






27
33
2
 Aは自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した。この贈与が書面によるものであるというためには、Aの贈与意思の確保を図るため、AB間において贈与契約書が作成され、作成日付、目的物、移転登記手続の期日および当事者の署名押印がされていなければならない。@

解説を見る

正しい 誤り
贈与契約の
解除
の可否
27
33
3
 Aは自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した。この贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時にこの贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合であっても、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでもこの贈与を解除することができる。(R02改)(発展)@

解説を見る

正しい 誤り
27
33
5
 Aは自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した。この贈与につき書面が作成され、その書面で、BがAの老後の扶養を行えばAが死亡した時にこの贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、Bが上記の負担を全部またはこれに類する程度まで履行したときであっても、特段の事情がない限り、Aは本件贈与を解除することができる。(R02改)(発展)@

解説を見る

正しい 誤り

担保責任
24
32
2
 贈与契約においては対価性を維持する必要がないため、目的物の瑕疵があったとしても、贈与者は、それについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく担保責任を負わない。(基礎)@

解説を見る

  廃    止
定期給付贈与 24
32
1
 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う。(基礎)@

解説を見る

正しい 誤り
17
28
5
 受贈者Bに対する定期の給付を目的とする贈与であらかじめ期間の定めがあるものは、贈与者Aが死亡しても、その期間内は効力を失うことはない。(応用)@

解説を見る

正しい 誤り












17
28
4
 負担付贈与において受贈者Bがその負担である義務の履行を怠るときは、贈与者Aは契約の解除をすることができる。(基礎)@

解説を見る

正しい 誤り
23
32
1
 贈与契約において、受贈者が、受贈の見返りとして贈与者を扶養する義務を負担していたにもかかわらず、この扶養する義務の履行を怠る場合には、贈与者は、贈与契約を解除することができる。(17-28-4の類型)@

解説を見る

正しい 誤り
27
33
4
 Aは自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した。この贈与について書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。(17-28-4の類型)@

解説を見る

正しい 誤り












2.総則
 売買(555条)
 「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」
チョッと補足
@売主の義務
・財産権を相手方に移転する義務(555条560条)
・果実を引き渡す義務(575条)
・契約不適合の場合の責任(562条563条564条など)
A買主の義務
・代金を支払う義務(555条)
・代金の利息を支払う義務(575条2項)
 手付(557条) 法改正(R02.04.01:1項、2項)
 「買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。
 ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」

  「同2項 545条4項(損害賠償の請求)の規定は、前項の場合には、適用しない」
 改正点とポイント
@1項
・「売主はその倍額を償還」から、「売主はその倍額を現実に提供」に。
⇒売主は倍額を返すかわりに、「倍額を現実に提供」でもよい。
・「当事者の一方が契約の履行に着手するまでは(解除できる)」から「相手方が契約の履行に着手した後は(解除できない)」に
⇒「履行に着手した相手側を保護する」という本来の趣旨に沿って改定
・いずれも、これまでの判例法理を明文化したものにすぎず、それ以外のことについても、これまでの判例等に従う。
A2項:545条の改定に従ったもの。
 売買契約に関する費用(558条)
 「売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する」
 有償契約への準用(559条)
 「この節(売買)の規定は、売買契約以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない」
6
30
3
 相手側が履行に着手する前に、買主が解約手付を放棄して売買契約を解除した場合に、売主に損害が生じたときは、その損害賠償の責任が問題となる。(R02改)@

解説を見る

正しい 誤り
23
32
2
 売買契約において買主から売主に解約手付が交付された場合に、売主が売買の目的物である土地の移転登記手続き等の自己の履行に着手したときは、売主は、まだ履行に着手していない買主に対しても、手付倍返しによる解除を主張することはできない。(発展)@

解説を見る

正しい 誤り
09
30
1
 売買の目的物の評価や契約書の作成に要した費用など、売買契約に関する費用は、特約のない限り、当事者双方が平分して負担する。(基礎)@
解説を見る
正しい 誤り

3. 売買の効力
3.1 売主の義務
 権利移転の対抗要件に係る売主の義務(560条)法改正(R02.04.01)
 「売主は、買主に対し、登記、登録その他の売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う」
 他人の権利の売買における売主の義務(561条)法改正(R02.04.01)
 「他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う」
 改正点とポイント
@560条:内容上は新規;解釈上当然のこととして認められていたことを明文化
A561条:
・旧560条と基本的には同じで、(権利の一部・・・を含む)を追加のみ。
・つまり、「他人の権利(権利の一部の場合も含む)を売買の目的としても、売買契約は有効であり、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う
B買主に移転することができないときは、履行不能となるので、415条(債務不履行による損害賠償)、542条1項1号(あるいは一部不能で同3号に該当する場合同3号)による催告によらない解除などができる。
3.2 契約の内容に不適合があった場合(旧瑕疵担保対応)
 買主の追完請求権(562条)法改正(R02.04.01:1項、2項:実質的には新規)
 「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
 ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる」
 「同2項 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない」
 改正点とポイント
@瑕疵担保責任に関する基本的な考え方の変更:
・瑕疵担保責任を、これまでの法定による責任ではなく、契約内容に照らして不適合であるとする責任(具体的には債務の不完全履行責任)として整理することに。
・これに伴い、これまでは、特定物はあるがまま引き渡せばよいとされていたが、改正後は「特定物」であっても、売買契約の内容(特に品質面)に適合した目的物を引き渡す契約上の義務を負っているという理解のもとで、欠陥のあるものを引き渡した場合には、契約不適合責任を負うことに。
A1項:契約不適合責任として、履行の追完(目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡し)を請求できることを明確にした。
B1項ただし書き:履行の追完方法は、原則として買主が選択できる。ただし、買主に不相当な負担を課するものでない方法であるならば、例外的に、売主が選択することもできる。
C2項:買主に帰責事由がある場合は、履行の追完の請求はできない。
⇒よって、買主に帰責事由がある場合は、563条(代金減額請求権)はみとめられない。

 買主の代金減額請求権(563条)法改正(R02.04.01:1項、2項、3項)
 「前条1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる」
 「同2項 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
@履行の追完が不能であるとき。
A売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
B契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
C前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
 「同3項 1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない」
 改正点とポイント
@改正前の代金減殺請求権は、旧565条(数量の不足または物の一部滅失の場合における売主の担保責任)のみ規定されていたが、改正後は、売買一般について、種類、品質、数量に関し、契約の内容に適合しないものであるときに対して適用されることに。
A具体的には、「買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる」
B2項:ただし、542条(催告によらない解除)と同様な状況の場合は、例外的に催告不要で直ちに代金の減額請求を可能とした。
C3項:「不適合が買主の帰責事由によるものであるときは、減額請求できない」が、これは買主に帰責事由があるときは、履行の追完請求そのものができないことによる。
 買主の損害賠償請求及び解除権の行使(564条)法改正(R02.04.01))
 「前2条(買主の追完請求権、買主の代金減額請求権)の規定は、415条(債務不履行による損害賠償)の規定による損害賠償の請求並びに541条(催告による解除)及び542条(催告によらない解除)の規定による解除権の行使を妨げない」
 改正点とポイント
@物の売買における損害賠償請求と契約の解除に関しては、改正前においては
・旧565条(数量の不足または物の一部滅失の場合における売主の担保責任)、旧570条(売主の瑕疵担保責任)などに個々に規定されていたが、これらは削除となった。
A改正後は、目的物の種類・品質・数量いずれかにおいて契約内容に不適合があった場合は、債務不履行に対する一般規定である415条(債務不履行による損害賠償)の規定、541条(催告による解除)及び542条(催告によらない解除)の規定が適用されることに(法定責任説から契約責任説へ)
B買主に帰責事由がある場合、解除はできない。(543条(債権者の責めに帰すべき事由による不履行と解除))
 移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任(565条)法改正(R02.04.01)
 「前3条(562条追完請求権、563条代金減額請求権、564条買主の損害賠償請求及び解除権の行使の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む)について準用する」 
 改正点とポイント
@権利の移転に伴う追完請求権、損害賠償請求、契約の解除に関しては、改正前においては、
・旧561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)、旧562条(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)、旧563条(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)、旧566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)、旧567条(抵当権等がある場合における売主の担保責任)などに個々に規定されていたが、これらは削除となった。
A改正後は、売買の目的たる権利が、契約内容不適合の場合は、562条(追完請求権)、563条(代金減額請求権)、564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使、すなわち、415条(債務不履行による損害賠償)の規定、541条(催告による解除)及び542条(催告によらない解除)の規定)が適用されることとなった。
 たとえば、
・売買目的物の上に、地上権・地役権や質権・抵当権などがの制限物権が存在している場合、あるいは必要とされていた地役権、地上権、土地賃借権などが存在しなかった場合など
B買主に帰責事由がある場合は、解除はできない。(543条(債権者の責めに帰すべき事由による不履行と解除))
C損害賠償請求に関し、買主が善意であることは要しない。
D解除に関し、買主が善意であることは要しない。
 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限(566条)法改正(R02.04.01)
 「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
 ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない」
 改正点とポイント
@改正前においては、地上権等がある場合における売主の担保責任(旧566条3項)、売買目的物に隠れた瑕疵がある場合の瑕疵担保責任(旧570条)に同様の時間制限規定が設けられていた。
A改正後は、「種類又は品質に関する契約内容不適合な目的物の引き渡し」に対して適用することに。(数量不足にはこの規定の適用はない)
B時効消滅との関係
・不適合を知ったにもかかわらず、知った時から1年以内に通知せず:解約不適合を理由とする履行の追完、代金の減額、損害賠償の請求、契約の解除の権利を失う。
・知った時から1年以内に通知:知った時から5年、引渡しから10年で時効消滅。
・不適合を知らないまま時間経過:引渡しから10年で時効消滅
 目的物の滅失等についての危険の移転(567条)法改正(R02.04.01)
 「売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。以下この条において同じ)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない」
 「同2項 売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも、前項と同様とする」
 競売における担保責任等(568条)法改正(R02.04.01:1項)
 「民事執行法その他の法律の規定に基づく競売における買受人は、541条及び542条の規定並びに563条(565条において準用する場合を含む)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができる」
 抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求(570条)法改正(R02.04.01)
 「買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権、質権又は抵当権が存していた場合において、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、買主は、売主に対し、その費用の償還を請求することができる」
 改正点とポイント
@改正前567条(抵当権等がある場合における売主の担保責任)の2項とほぼ同様(1項、3項は削除)
A例えば、買い受けた不動産についていた抵当権は買主が抹消請求することになるが、そのために抵当権者に支払った費用は、売主の債務の弁済であるから、買主は売主に請求することができる。
577条による代金の支払拒絶権も認められている。




















6
30
2
 他人に帰属している財産権を、売買の目的物とすることはできない。(基礎) @

解説を見る

正しい 誤り
9
30
3
 他人の所有物を目的とする売買契約は有効であり、その売主は、その目的物の所有権を取得して買主に移転する義務を負う。(基礎) @

解説を見る

正しい 誤り
15
28
3
  Aは、BからB所有の絵画を預かっている。
 最高裁判所の判例によれば、Aがこの絵画を自分の物であると偽ってCに売却した場合、Bにこの絵画を手放す意思がないため、Aがこの絵画の所有権を取得してCに移転させることができないときは、この売買契約は無効である。 @

解説を見る

正しい 誤り
12
27
1
 Aは、BにA所有の絵画を預けた。
 Bが、この絵画を自己のものだと偽ってCに売却した場合、この売買契約は無効である。@

解説を見る

正しい 誤り
19
27
1
 AがB所有の土地をCに売却した場合において、AがBから土地の所有権を取得してCに移転できない場合、Cは、契約時にAに土地の所有権がないことを知っていたとしても、契約の解除ができる。 @

解説を見る

正しい 誤り
24
31
1
 Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結した。この際、甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知りながらBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAは、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。(19-27-1の類型) (R02改)@

解説を見る

正しい 誤り
24
31
2
 Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結した。この際、甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知らずにBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Bは、契約の時に甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAに対して、単に甲土地の所有権を移転できない旨を通知して、契約の解除をすることができる。@

解説を見る

参考問題










06
30
4
 いす(不特定物)500個の売買契約が成立し、買主はその引渡しを受けたが、数量が不足していた。いすの引渡し時に買主がこの数量不足を知らなかったとき、買主は代金減額請求はできるが、契約の解除はできない。 @

解説を見る

正しい 誤り

3
33
 Aが甲建物をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合、履行の追完が合理的に期待できるときであっても、Bは、その選択に従い、Aに対して、履行の追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

解説を見る

正しい 誤り

3
33

 Aが甲建物をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲が契約の内容に適合しない場合において、その不適合がBの過失によって生じたときであっても、対価的均衡を図るために、BがAに対して代金の減額を請求することは妨げられない。

解説を見る

正しい 誤り







3
33
 Aが甲建物をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲建物が契約の内容に適合しない場合、Bは、Aに対して、履行の追完または代金の減額を請求することができるが、これにより債務不履行を理由とする損害賠償の請求は妨げられない。

解説を見る

正しい 誤り











15
29
 Aは不動産会社Bと建売住宅を購入する契約を締結した。
 この建売住宅のために設定されているはずの通行地役権が設定されていなかった場合、AはBに対して、移転した権利についての契約内容不適合による契約の解除ができる。(R02改)@
解説を見る
正しい 誤り
24
31
5
 Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結した。この際、甲土地についてCの抵当権が設定されていた場合において、Aがこれを知らずに買い受けたところ、抵当権の行使によりその所有権を失った。
 この場合、Aは、抵当権が設定されていたことについて善意である限り、Bに対して、その契約を解除して損害賠償を請求することができる。@

解説を見る

正しい 誤り
その他 15
29
 Aは不動産会社Bと、BがC工務店に注文して建築させた建売住宅を購入する契約を締結した。
 この建売住宅にCの手抜き工事による欠陥があって、通行人Dがケガをしてしまった場合、DはCに対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求ができる。@

解説を見る

正しい 誤り
担保責任追及
と期間制限
24
31
3
 Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結した。この際、甲土地の一部の所有権がCに属していた場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Aは、甲土地の一部の所有権がCに属していたことについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく、契約の時から1年以内に限り、Bに対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額請求をすることができる。@

解説を見る

正しい 誤り
24
31
4
 Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結した。この際、契約の時に一定の面積を表示し、この数量を基礎として代金額を定めてBがAに甲土地を売却した場合において、甲土地の面性が契約時に表示された面積よりも実際には少なく、表示された面積が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しているために実際の面積であればAがこれを買い受けなかったときは、その面積の不足について善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。@

解説を見る

正しい 誤り

3
33
  Aが甲建物をBに売却する旨の売買契約に関して、Bに引き渡された甲建物が契約の内容に適合しない場合において、BがAに対して損害賠償を請求するためには、Bがその不適合を知った時から1年以内に、Aに対して請求権を行使しなければならない。

解説を見る

正しい 誤り

4. 支払
4.1 代金の支払期限(573条)
 「売買の目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限を付したものと推定する」
⇒支払期限を決めなかった場合は、通常は、412条3項により「売主はいつでも支払の請求をすることができる」
 しかし、物の引渡し日が決まっているときの代金支払期限は、その引渡し日とする。
4.2 代金の支払場所(574条)
 「売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない」
⇒通常は、484条により「特定物の引渡しは売買契約した時にその物があった場所、その他の場合は売主の住所」である。
 引渡しと同時に代金を支払うべきときは、引き渡し場所で支払う。
4.3 果実の帰属及び代金の利息の支払(575条)
 「まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する」
 「2項 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない」  
 売買契約後の果実は誰のもの
 引渡し前でかつ代金未払  売主  代金支払いと引渡しは同時になされるのが原則。
 代金受け取りまで売主が商品を保管する費用は、果実で補填してよい。
 その代わり、買主も商品を受け取るまでは代金の利息を払う必要はない。
 引渡し後  買主  買主は代金(引渡し後支払いまでの間の利息を含む場合がある)の支払い義務が発生。
 代金支払い後  買主  引渡し前であっても、果実は買主のもの(売主が、代金の支払いを受け、果実も手に入れることは許されない) 

4.4 代金支払拒絶権
 権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶(576条) 法改正(R02.04.01、太字部分追加)
 「売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。
 ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない」
 改正点とポイント
@「権利主に(所有権)を主張する者」のほかに、その他の事由」を追加:
・「その他の事由」とは、例えば、売買の目的物に用益物権(地上権、地役権など他人の土地を一定の目的のため使用・収益する権利)があると主張する第三者が存在することなどをいう。
A「取得することができず」を追加し、権利取得後にそれを失うだけでなく、権利を取得できない恐れがある場合も含めることに。
 抵当権等の登記がある場合の買主による代金支払の拒絶(577条)法改正(R02.04.01:1項、2項)
 「買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる」
 「2項 前項の規定は、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない先取特権又は質権の登記がある場合について準用する」
 改正点とポイント
@1項:「抵当権の登記がある」から、「契約の内容に適合しない抵当権の登記がある」に
 2項についても、同様に、「契約の内容に適合しない先取特権又は質権の登記がある」に。
A「契約の内容に適合しない」とあるから、抵当権等の存在が考慮されて契約内容が合意されたものであれば、本条の適用はない。

 売主による代金の供託の請求(578条)
 「前二条の場合においては、売主は、買主に対して代金の供託を請求することができる」
⇒買主による「代金支払拒絶権」と「抵当権等の登記がある場合の買主による代金支払の拒絶権」に対する、売主の対抗手段として、「代金の供託請求権」が認められている。
4.5 所有権留保特約
 売主が売買代金を担保するため、売買契約の中の特約により、売買契約代金が完済されるまで、所有権を留保するもの。
 この所有権留保の効力については、以下の考え方の間で争いがある。
(1)所有権的構成:代金が完済されるまで、所有権その物が売主に留保されており、買主は利用権があるにすぎない(すなわち、所有権は代金完済の時期に初めて買主に移転する)
 代金の弁済ができなくなったときは、買主は所有権に基づいて引き渡し請求などができる。
(2)担保的構成:売主がもつのは、代金回収に関する担保権であって、それ以外の物権的な権利は買主にある。
 代金の弁済ができなくなったときは、買主は目的物を処分して、残りの代金を優先的に回収することができる。



18
32
 売買目的物の引渡しについて期限があるときは、代金の支払についても同一の期限までに買主が売主に対してその代金を支払わなければならないものと推定される。@

解説を見る

正しい 誤り
果実の帰属と利息の支払 06
30
5
 売買契約の成立後においては、当該売買契約の目的物に生じた果実は、当該目的物の引渡しおよび代金支払いがなくても、買主に属する。@ (基礎)

解説を見る

正しい 誤り
9
30
4
 特定物の売買では、引渡しの時までに当該特定物から生じた果実があれば、特約のない限り、売主は、代金の支払を受けていないときでも、これを買主に引き渡さなければならない。(06-30-5の類型)@

解説を見る

正しい 誤り


















09
30
2
 売買の目的物について、第三者が所有権を主張し、買主が目的物の権利を失うおそれがあるときは、特約のない限り、買主は、売主が相当の担保を提供した場合を除き、その危険の限度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒否できる。 @
解説を見る
正しい 誤り


32
 無断転貸において、賃貸人が転借人に建物の明渡しを請求したときは、転借人は建物を使用収益できなくなるおそれがあるので、賃借人が転借人に相当の担保を提供していない限り、転借人は、賃借人に対して転貸借の賃料の支払を拒絶できる。 (09-30-2の類型) @
解説を見る
正しい 誤り
9
30
5
 売買の目的物である不動産に抵当権の登記がなされている場合、特約のない限り、買主は、売主から抵当権消滅請求をするよう求められたときは、遅滞なくその手続をしなければ、その代金の支払を拒否できない。 @

解説を見る

正しい 誤り
25
29
3
 Aが自己所有の事務機器甲をBに売却する旨の売買契約が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。
 A-B間の売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。 (発展)@

解説を見る

正しい 誤り



















5.買戻し
 買戻しの特約(579条)法改正(R02.04.01)
 「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。583条1項において同じ)及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。
 この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす」
 改正点とポイン点
@「買戻し」とは、たとえば融資額を代金と見立てて、債権者が債務者の不動産を購入するという形式をとり、債務者である売主が期間内に融資額(代金)と契約費用を返還すれば、売買を解除して、売却した不動産を取り戻すことができるとするもの。
・不動産に限ること
・売買契約と同時に買戻しの特約を結ぶこと。
A売買契約が成立した後に買主がその不動産を他人に売り払っている場合があったとしても、元の所有者(売主)は、買戻し期間内に、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額)及び契約の費用を返還することによって、元の売買契約は当初からなかった(よって、不動産の所有権は最初から移転しなかった)ことになるので、これを取り戻すことができる
B改正点は、「買主が支払った代金」の代わりとして、(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額」を追加したこと。
 買戻しの期間(580条)
 「買戻しの期間は、十年を超えることができない。特約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は、十年とする」
 「2項 買戻しについて期間を定めたときは、その後にこれを伸長することができない」
 「3項 買戻しについて期間を定めなかったときは、5年以内にに買戻しをしなければならない」
⇒買戻し期間は5年以内。5年を超えた期間を定めることもできるが、最長でも10年である。
 買戻しの特約の対抗力(581条 法改正(R02.04.01:1項、2項)
 「売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第三者に対抗することができる」

 「2項 前項の登記がされた後に605条の2(不動産の賃貸人たる地位の移転)の1項に規定する対抗要件を備えた賃借人の権利は、その残存期間中一年を超えない期間に限り、売主に対抗することができる。ただし、売主を害する目的で賃貸借をしたときは、この限りでない」
 改正点とポイン点
@ 売買契約と同時に買戻しの特約を登記することにより、第三者に対する対抗力も認められる。
A1項:「第三者に対してもその効力を有する」から「第三者に対抗することができる」に。単なる表現上の問題。
A2項:「登記をした(賃借人)」から「前項の登記がされた後に605条の2の1項に規定する対抗要件を備えた (賃借人)」に。
⇒不動産上に対抗要件を備えた賃借人がいる場合は、売主(買戻し権者)を害する目的で賃貸借をした場合をのぞき、その賃借人は、例外的に、一年を超えない期間に限って、対抗力を認めた。
 買戻しの実行(583条)
 「売主は、580条に規定する期間内に代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額)及び契約の費用を提供しなければ、買戻しをすることができない」
 「2項 買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第196条の規定に従い、その償還をしなければならない。  
 ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる」
6
30
1
 土地の売買において買戻しの特約をする場合は、契約締結時にしなければならない。(基礎)@

解説を見る

正しい 誤り
21
32

 

 Aは、Bに対して自己が所有する士地を売り渡したが、この売買契約と同時に買戻しの特約をしていた場合において、Aが買戻権を行使したときは、この売買契約成立後Aが買戻権を行使するまでにBがその土地につき必要費を支出していたとしても、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができない。@

解説を見る

正しい 誤り