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民   法 (債 権 者 代 位 権、詐 害 行 為 取 消 権)

関連過去問 3-29-13-29-23-29-33-29-43-29-58-30-18-30-28-30-38-30-48-30-511-29-111-29-211-29-311-29-411-29-512-29-ア12-29-イ12-29-ウ12-29-エ12-29-オ17-27-ア17-27-イ17-27-ウ17-27-エ17-27-オ17-29-120-30-オ20-32-525-30-125-30-225-30-325-30-425-30-528-32-128-32-228-32-328-32-428-32-5令3-32-1令3-32-2令3-32-3令3-32-4令3-32-5
関連条文 債権者代位権の要件(423条)、代位行使の範囲(423条の2)、債権者への支払又は引渡し(423条の3)、相手方の抗弁(423条の4)債務者の取立てその他の処分の権限等(423条の5)、被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知(423条の6)、登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権(423条の7)
 詐害行為取消請求(424条)、相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(424条の2)、特定の債権者に対する担保の供与等の特則(424条の3)、過大な代物弁済等の特則(424条の4)、転得者に対する詐害行為取消請求(424条の5)、財産の返還又は価額の償還の請求(424条の6)、被告及び訴訟告知(424条の7)、詐害行為の取消しの範囲(424条の8)、債権者への支払又は引渡し(424条の9
 認容判決の効力が及ぶ範囲(425条)、債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(425条の2)、受益者の債権の回復(425条の3)、詐害行為取消請求を受けた転得者の権利(425条の4)、詐害行為取消権の期間の制限(426条)




















1.債権者代位権の要件(423条) 法改正(R02.04.01)
 「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(被代位権利という)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない」

 「同2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない」
 「同3項 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない」
 改正点
@1項:
・「自己の債権を保全するため必要があるとき」について、「必要があるとき」を追加し、「保全の必要性」があることを要する旨を明確にした。
・後に続く条文でも使用するため、「被代位権利(債務者が所有していた権利であって代位権が行使された権利)」という言葉を定義した。
・「差押えを禁じられた権利」も代位行使できないことと解されていたので、これを明文化した。
A2項:
・「(債権の期限が到来しない間は)債権の裁判上の代位によらなければ」を削除。(利用例が少ないことから、「裁判上の代位の制度」による例外規定を廃止)
B3項(新規):従来からの一般的理解を明文化した。

@債権者代位権は、債務者が自ら財産権を行使しない場合に、債権者がその債権を保全する必要があるために、債務者に代わってその権利を行使して、債務者の責任財産の維持を図る制度。
 あくまでも強制執行の準備策として行うものであるから、保全すべき自己の債権とは、原則として金銭債権である。
A裁判外でも裁判上でも行使できる。
 なお、代位権の行使は、債権者が自己の名において債務者の権利を行使するのである。
B代位して行使する権利は、債権の引当ての対象となる責任財産の保全に必要な、債務者が保有している権利であって、損害賠償請求権、不動産の移転登記請求権、解除権、取消権などが対象になりうる。
 原則は「強制執行可能な権利」であるが、これに限らないこともある。
C強制執行とは異なり、債務名義は不要、債務者の同意も不要である。
 債権者代位権の主な要件
@  債務者が無資力であること。(金銭債権以外の特定債権の場合には、無資力の要件は不要)
 ⇒自己の保有財産よりも金銭債務(借金)の方が多い。 
A  債務者が自らその権利を行使しないこと。
 ⇒たとえば債務者が第三の債務者に対して債権をもっているにもかかわらず、取り立てようとしない。 
B  債務者の権利が一身専属権、あるいは強制執行により実現することのできないものでないこと。
⇒この場合の一身専属権は行使上の一身専属権とされ、その権利を行使するか否かが本人の個人的意思に委ねられなければいけないもの。(つまり、第三者が本人の意思決定に介入してはいけないもの)
 たとえば、夫婦間での契約を取消す権利、離婚請求権、慰謝料請求権、遺留分減殺請求権など 
C
 債権の履行期がきていること。
 ただし、保存行為(財産の価値を現状維持するための行為、たとえば、建物の修繕や登記行為など)は履行期とは無関係に行使できる。

 代位行使の範囲(423条の2) 法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、被代位権利を行使することができる」
⇒たとえば、金銭債権に基づいて債務者の第三債務者に対する金銭債権を代位行使する場合は、債権者は自己の債権額の範囲においてのみ行使できる」
 債権者への支払又は引渡し(423条の3) 法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が金銭の支払又は動産の引渡しを目的とするものであるときは、相手方に対し、その支払又は引渡しを自己に対してすることを求めることができる。
 この場合において、相手方が債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、被代位権利は、これによって消滅する」

@金銭の支払い、物の引渡しの場合、代位権行使者(債権者)は自分に支払え、自分に渡せと相手方に要求できる。
A相手方が代位権行使者(債権者)に支払い、引き渡しをしたときは、債務者に返還する義務はなく、非代位権利(債務者が所有していた権利であって代位権が行使された権利)は、消滅する。
 いずれも、従来からの判例法理に従ったものである。
 相手方の抗弁(423条の4) 法改正(R02.04.01新規)
 「債権者が被代位権利を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる」

・相手方(第三債務者)は、債務者に対して有する抗弁をもって、債権者に対抗できる(従来の反李法理を明文化した)
 一方、相手方(第三債務者)は、債権者(代位権行使者)に対して有する抗弁をもって、債権者に対抗することはできないと解される。
 債務者の取立てその他の処分の権限等(423条の5)法改正(R02.04.01新規)
 「債権者が被代位権利を行使した場合であっても、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることを妨げられない。この場合においては、相手方も、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない」

・改正前における判例法理では、「債権者が代位行使に着手し、債務者がその通知を受けるか、又はその権利行使を了知したときは、債務者は被代位権利である取立てその他の処分の権利を失う」とされていた。
・改正後は、この法理を変更し、「債権者が代位行使に着手した場合であっても、債務者自らが取立てその他の処分を行う権利に制限はかからない」とした。
 また、第三債務者に対しても、債務者に履行するけ権利に制限はかからないことにした。
 被代位権利の行使に係る訴えを提起した場合の訴訟告知(423条の6) 法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない」

・代位権の行使は、裁判上あるいは裁判外いずれでも可能であるが、裁判上で行う場合は、債務者に対し、遅滞なく、訴訟告知をしなければならないとした。
・これは、その裁判の判決は、債務者に対しても効力が及ぶことになるからである。
 訴訟告知を義務付けることにより、債務者にその訴訟に関与できる機会を保障したとする。
 登記又は登録の請求権を保全するための債権者代位権(423条の7) 法改正(R02.04.01新規)
 「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、その譲渡人が第三者に対して有する登記手続又は登録手続をすべきことを請求する権利を行使しないときは、その権利を行使することができる。この場合においては、前三条の規定を準用する」

・債権者代位権においては、本来的には。保全されるべき債権は金債債権である。
 しかしながら、従来からも判例において、債務者の責任財産の保全を目的としない転用型の債権者代位権が認められていた。
・本条は、特に、不動産登記請求権の代位行使について、従来からの判例法理を明文化したものである。
 ただし、それ以外の他の転用に関する判例を否定するものではないといわれている。
3
29
5
 債権者代位権は、債権者が債務者の代理人としてその権利を行使するのであって、債権者が自己の名を持って債務者の権利を行使するのではない。 (基礎)@

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正しい 誤り
28
32
3
 債権者は、債務者に属する権利を、債権者自身の権利として行使するのではなく、債務者の代理人として行使することができる。 (3-29-5の類型)@
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正しい 誤り
3
29
4
 債務者が既に自ら権利を行使している場合でも、その行使の方法または結果の良否によっては、債権者は債権者代位権を行使することができる。@

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正しい 誤り
代位権の代位 17
27
 不動産がA→B→Cと順次売却された場合において、それらの所有権移転登記が未了の間に、Dが原因証書等を偽造して、同一不動産につきA→Dの所有権移転登記を経由してしまったときは、Cは、Bの債権者として、BがAに代位してDに行使することができる所有権移転登記の抹消請求権を代位行使することができる。@

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正しい 誤り
一身専属権 3
29
2
 債権者は、自己の債権を保全するためであれば、債務者の一身に専属する権利であっても債権者代位権を行使することができる。(基礎)@

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正しい 誤り
17
29
1
 遺留分減殺請求権は、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位権の目的とすることができない。(参考問題)@

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参考問題につき、正解なし







28
32
2
 債権者は、債務者に属する物権的請求権のような請求権だけでなく、債務者に属する取消権や解除権のような形成権についても代位行使することができる。@
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正しい 誤り

3
32
1
 債権者は、債務者に属する権利(被代位権利という)のうち、債務者の取消権については、債務者に代位して行使することはできない。(28-32-2の類型)
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正しい 誤り





20
30
 Aは、自己所有の土地につき、Bとの間で賃貸借契約を締結した(賃借権の登記は未了)。
 AがBにこの土地の引渡しをしようとしたところ、この契約の直後にCがAに無断でこの土地を占拠し、その後も資材置場として使用していることが明らかとなった。
 Cは明渡請求に応ずる様子もないため、Bが、AがCに対して行使することができる、所有権に基づく土地明渡請求権を代位行使することは妥当である。@

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正しい 誤り











17
27

 

 債権者Aは、Bに対する金銭債権を保全するためにBのCに対する動産の引渡請求権を代位行使するにあたり、Cに対して、その動産をBに引渡すことを請求することはできるが、直接自己に引渡すことを請求することはできない。@

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正しい 誤り

3
32
3
 債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利が動産の引渡しを目的とするものであっても、債務者の相手方に対し、その引渡しを自己に対してすることを求めることはできない。(17-27ーイの類型)

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正しい 誤り
17
27
 AはBから同人の所有する建物を賃借する契約を締結したが、その建物の引渡しが行われていない状態のもとでそれをCが権原なく占有してしまった場合において、Aが、自己の賃借権を保全するためにBに代位して、Cに対して建物の明渡しを請求するときは、Aは、建物を直接自己へ引き渡すことを請求することができる。@

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正しい 誤り





3
32
4
 債権者が、被代位権利の行使に係る訴えを提起し、遅滞なく債務者に対し訴訟告知をした場合には、債務者は、被代位権利について、自ら取立てその他の処分をすることはできない。

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正しい 誤り
相手方の権限 令3
32
5
 債権者が、被代位権利を行使した場合であっても、債務者の相手方は、被代位権利について、債務者に対して履行をすることを妨げられない。

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正しい 誤り










3
29
1
 債権者が債権の履行期前に債権者代位権を行使することは、保存行為の場合を除き、裁判上の代位によってもできない。 (R02改)@

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正しい 誤り
28
32
1
 債権者は、債権の弁済期前であっても、債務者の未登記の権利について登記の申請をすることについて、裁判所の許可を得た場合に限って、代位行使することができる。 (3-29-1の類型)@

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正しい 誤り

3
32
2
 債権者は、債務者の相手方に対する債権の期限が到来していれば、自己の債務者に対する債権の期限が到来していなくても、債務者に属する権利(被代位権利という)を行使することができる。

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正しい 誤り












17
27
 自動車事故の被害者Aは、加害者Bに対する損害賠償債権を保全するために、Bの資力がその債務を弁済するに十分であるか否かにかかわらず、Bが保険会社との間で締結していた自動車対人賠償責任保険契約に基づく保険金請求権を代位行使することができる。@

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正しい 誤り
3
29
3
 債権者が特定債権を保全するために債権者代位権を行使するには、債務者が無資力であることを要する。@

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正しい 誤り
17
27
 著名な陶芸家の真作とされた陶器がA→B→Cと順次売却されたが、後にこれが贋作と判明した場合において、無資力であるBがその意思表示に要素の錯誤があることを認めているときは、Bみずから当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、Cは、Bに対する売買代金返還請求権を保全するために、Bの意思表示の錯誤による無効を主張して、BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使することができる。(参考問題)@

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 参考問題につき、正解なし
























2.詐害行為取消
2.1 詐害行為取消権の要件
 詐害行為取消請求(424条) 法改正(R02.04.01)
 「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。
  ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない」
 「同2項 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない」
 ⇒婚姻、離婚などによる財産分与、相続の放棄などの身分行為は、間接的に財産の減少に関わることであっても、通常の場合、取消しの請求はできない。
 「同3項 債権者は、その債権が1項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(詐害行為取消請求という)をすることができる」
 「同4項 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない」
 改正点
@1項
・「知ってした法律行為」を「知ってした行為」に
 従来からも、法律行為に限らず、弁済(準法律行為や債務の承認(観念の通知)も含まれていたことによる。
・「行為によって利益を受けた者又は転得者」において、「又は転得者」を削除
 転得者については、別途に424条の5に規定されることになったため。
・「害すべき事実を知らなかった」を「害することを知らなかった」に
A3項:新規
 被保全債権が詐害行為の前の原因に基づいて生じたもの場合に限り、取消の請求ができるというこれまでの判例の考え方を明文化した。
B4項:新規
 被保全債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、取消の請求ができないとするこれまでの解釈を明文化した。
 債権者を害する
 行為(無資力になる行為)
 その行為を行うことによって、
・債務者が無資力になる(財産よりも債務の方が多くなる)行為
・もともと無資力であったのにさらにその程度がひどくなる(債務が増える)行為
・不動産を適正価格で売却することも詐害行為
⇒金銭にかわれば、いつ消費されてしまうかわからないから。ただし、期限がきている借金の弁済にあてる場合は正当な行為であって、詐害行為とはいえない。
 債権者の債権
・弁済期がきていなくてもよい。
・詐害行為よりも前に発生したものでないといけない。
・特定物債権であるときは、取消しの請求をするときまでに、債務不履行による損害賠償が請求できる状態でないといけない。
 悪   意
・債務者は詐害行為(債権者の利益を害する行為)になることを知っていなければならない。
・受益者も詐害行為(債権者の利益を害する行為)なることを知っていなければならない。
 取消しの請求  債権者本人の名前で、裁判所において行う

 相当の対価を得てした財産の処分行為の特則(424条の2法改正(R02.04.01新規)
 「債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる」
@その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(隠匿等の処分)をするおそれを現に生じさせるものであること。
A債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
B受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。

・従来においては、「債務者が受益者から相当の対価を得て財産を処分した場合は、原則として詐害行為に当たる」としていたが、
 改正後は、このような場合にあっても、詐害行為に当たるための要件を上記@、A,Bいずれにも該当する場合に限るとして、要件を厳格化した。(すなわち、原則は、詐害行為には当たらないことに)
 特定の債権者に対する担保の供与等の特則(424条の3法改正(R02.04.01新規)
 「債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる」
@その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項1号において同じ)の時に行われたものであること。
Aその行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
 「2項 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる」
@その行為が、債務者が支払不能になる前30日以内に行われたものであること。
Aその行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。

@1項:
 従来の判例では、たとえば、無資力の債務者が特定の債権者と通謀して、他の債権者を害する通謀詐害意図を持って弁済した場合は、詐害行為に当たるとしていた。
 改正後は、この要件をさらに厳格化し、@債務者の支払不能のときに行われたことと、A通謀詐害意図を持って行われたことの2条件が必要とした。(支払い不能前の行為は対象外とする)
A2項:特定の債権者を利する行為が債務者の義務に属さない場合にあっては、支払い不能前30日以内の行為についても、通謀詐害意図を持って行われた場合は、詐害行為に当たるとすることに。
 過大な代物弁済等の特則(424条の4法改正(R02.04.01新規)
 「債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、424条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条1項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる」

・過大な代物弁済が行われた場合、その過大な部分が424条(詐害行為取消請求)の要件に該当するときは、424条の3(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)1項に関わらず、その超過部分を取り消すことができるようにした。

 転得者に対する詐害行為取消請求(424条の5法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める場合に限り、その転得者に対しても、詐害行為取消請求をすることができる」
@その転得者が受益者から転得した者である場合:その転得者が、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。
Aその転得者が他の転得者から転得した者である場合 その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき。 
2.2 詐害行為取消権の行使の方法等
 財産の返還又は価額の償還の請求(424条の6法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、受益者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、その行為によって受益者に移転した財産の返還を請求することができる。
 受益者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる」
 「2項 債権者は、転得者に対する詐害行為取消請求において、債務者がした行為の取消しとともに、転得者が転得した財産の返還を請求することができる。転得者がその財産の返還をすることが困難であるときは、債権者は、その価額の償還を請求することができる」

@1項前段と2項前段:詐害行為の取消しとともに、受益者又は転得者に対して、移転又は転得した財産の返還請求(原状回復請求)ができることを明文化した。
A1項後段と2項後段:現物による返還が困難な場合は、価額の償還ができることを明文化した。
・いずれも、これまでの判例法理に応じたものである。
 被告及び訴訟告知(424条の7)法改正(R02.04.01新規)
 「詐害行為取消請求に係る訴えについては、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を被告とする」
@受益者に対する詐害行為取消請求に係る訴え:受益者
A転得者に対する詐害行為取消請求に係る訴え:その詐害行為取消請求の相手方である転得者
 「2項 債権者は、詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければならない」

@1項:詐害行為取消訴訟の被告は、受益者又は転得者であることを明文化
A2項:詐害行為取消訴訟を起こしたときは、被告ではないけれど、訴訟の結果について効力が及ぶ債務者に、告知する義務があることを明文化した。
 詐害行為の取消しの範囲(424条の8法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、詐害行為取消請求をする場合において、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができる」
 「2項 債権者が424条の6の1項後段又は2項後段(いずれも現物返還が困難な場合の価額の償還請求)の規定により価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする」
 債権者への支払又は引渡し(424条の9法改正(R02.04.01新規)
 「債権者は、424条の6の1項前段又は2項前段(いずれも財産の返還請求(原状回復請求))の規定により受益者又は転得者に対して財産の返還を請求する場合において、その返還の請求が金銭の支払又は動産の引渡しを求めるものであるときは、受益者に対してその支払又は引渡しを、転得者に対してその引渡しを、自己に対してすることを求めることができる
 この場合において、受益者又は転得者は、債権者に対してその支払又は引渡しをしたときは、債務者に対してその支払又は引渡しをすることを要しない」
 「2項 債権者が424条の6の1項後段又は2項後段(いずれも現物返還が困難な場合の価額の償還請求)の規定により受益者又は転得者に対して価額の償還を請求する場合についても、前項と同様とする」 
2.3 詐害行為取消権の行使の効果 
 認容判決の効力が及ぶ範囲(425条) 法改正(R02.04.01)
 「詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する」
改正点
@改正前は「424条(詐害行為取消権)の規定による取消しは、すべての債権者に対してもその効力を有する」とあった。そして、「取消しの効果は債務者には及ばない」とされていた。
 しかし、これでは理屈のつかないところもあったので、詐害行為取消訴訟の当事者にはならない債務者に対して、取消しの効果を及ぼすために、判決効は債務者に及ぶという文言に書き換えられた。
Aこれにより、「詐害行為取消しの効果は取消し債権者と受益者・転得者との間でのみ生じ、債務者には及ばない」という従来の考え方が大きく変更されたことになる。
 債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利(425条の2法改正(R02.04.01新規)
 「債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる」
 受益者の債権の回復(425条の3)法改正(R02.04.01新規)
 「債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(424条の4の規定により取り消された場合を除く)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する」
 詐害行為取消請求を受けた転得者の権利(425条の4)法改正(R02.04.01新規)
 「債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたときは、その転得者は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める権利を行使することができる。ただし、その転得者がその前者から財産
を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度とする」
@425条の2に規定する行為が取り消された場合:その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
A前条に規定する行為が取り消された場合(424条の4の規定により取り消された場合を除く):その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば前条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権。
2.4 詐害行為取消権の期間の制限(426条)法改正(R02.04.01) 
 「詐害行為取消請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時から二年を経過したときは、提起することができない。
 行為の時から十年を経過したときも、同様とする」
改正点とポイント1
 改正前は「詐害行為取消権は、債権者が取消しの原因を知った時から二年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする」とあったところ、
@「取消しの原因を知った時(すなわち詐害行為の客観的事実を知った時)から、「債権者を害することを知って行為をしたことを知った時」とし、従来の判例の考え方を明文化した。
A改正前は、期間制限の趣旨を「時効」の問題として条文化されていたが、実際には裁判所の出訴期間期間であると考えるの相当であるとされていたので、これを明文化した。
 このため、時効の更新等の規定の適用はないことに。
B「行為の時から二十年」を「十年」に短縮した。
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1
 債権者取消権は、裁判上行使し得るだけでなく、裁判外でも行使し得る。@

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正しい 誤り
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2
 債務者が一部の債権者に債務の本旨に従った弁済をなすことは、原則として詐害行為にならないとするのが判例の立場である。@

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正しい 誤り
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29
 債権者は、債務者の財産から満足を得られない場合には、債権取得前に債務者が行った贈与契約を詐害行為として取り消して財産を取り戻すことができる。@

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正しい 誤り







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3
 特定物の引渡しを目的とする債権を有する者も、目的物の処分により債務者が無資力となった場合には、詐害行為取消権を行使し得る。 @

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正しい 誤り
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 不動産が二重に譲渡されたため、第一の買主が不動産の引渡しを受けることができなくなった場合には、第一の買主は、債務者と第二の買主との間で行われた売買契約を詐害行為として取り消すことができる。@

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正しい 誤り
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4
 甲不動産がAからB、AからCに二重に譲渡され、Cが先に登記を備えた場合には、AからCへの甲不動産の譲渡によりAが無資力になったときでも、Bは、AからCへの譲渡を詐害行為として取り消すことはできない。(12-29-イの発展)@

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正しい 誤り
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5
 AがBに対して自己所有の家屋を売る契約をした場合において、Bが登記を備える前に、Aが、Bを害することを知っているFと通謀して当該家屋をFに対して代物弁済し、登記を移転してしまった場合、Aがその結果無資力となれば、Bは、A・F間の代物弁済を、詐害行為を理由に取り消すことができる。@

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正しい 誤り







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29
2
 財産権を目的としない法律行為は、原則として債権者取消権の行使の対象とならないが、相続の放棄は、例外として債権者取消権の行使の対象となる。(基礎)@

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正しい 誤り
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 相続の放棄は、詐害行為とならない。(11-29-2の類型)@

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正しい 誤り
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2
 相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。(11-29-2の類型)@

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正しい 誤り
25
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1
 遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。 (応用)@

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正しい 誤り
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 債務者の財産状態が離婚に伴う相当な財産分与により悪化し、債権者の満足が得られなくなった場合には、債権者は財産分与を詐害行為として取り消すことができる。@

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正しい 誤り
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 離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。(12-29-ウの類型)@

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正しい 誤り










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4
 詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、当該債権者取消権を行使した債権者のみに生ずる。(R2改)@

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正しい 誤り
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4
 詐害行為取消権による取消しの効果は、訴訟当事者である債権者及び受益者または転得者だけでなく、訴訟に関与しない債務者についても及ぶ。(参考問題)@

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 参考問題につき、正解なし
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 債務者が第三者に金銭を贈与したことにより、自己の債権の満足が得られなくなっただけではなく、他の債権者の債権も害されるようになった場合には、取消債権者は自己の債権額を超えていても贈与された金銭の全部につき詐害行為として取り消すことができる。@

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正しい 誤り
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 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。 (12-29-エ類型)@

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正しい 誤り
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 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。@

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正しい 誤り
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 債権者は自己の債権について、詐害行為として取り消し、受益者から取り戻した財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる。@

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正しい 誤り






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 詐害行為取消権は、債権者が債務者の代理人として行うものではなく、自己の名において裁判上行使するものである。(基礎)@

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正しい 誤り
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 詐害行為取消権の立証責任に関しては、債務者の悪意と同様に、受益者および転得者側の悪意についても債権者側にある。(発展)@

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正しい 誤り






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 債権者取消権は、取消しの対象となる行為があったときから2年間行使しないときは、時効により消滅する。(基礎)@

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正しい 誤り
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 詐害行為取消権の短期出訴期間制限の起算点は、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知った時からである。(R2改)(11-29-5の応用)@

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正しい 誤り